お米のふるさと便り 3巻2号 (通巻26号)
11月25日 編集人:松尾真

今号のTOPIC
* 冬を前にした風景あれこれ
* 「エコプロダクツ展2010」に出展
* 雪山トレッキングのお誘い
* 山間地の農業をどう守るか

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●冬を前にした風景あれこれ●


まだ夜が明けない6時頃の気温は1℃、日中も5〜6℃という日が多くなってきました。雪がしっかり積もってしまうと結構あたたかいのですが、根雪になる前が寒いのです。
そんな本格的な冬を間近にした村ですが、随所に冬にむけての光景が見られます。

写真は21日午後、ネットワーク理事長樋口利行さんのお宅でのもの。ネギが干してあります。奥さんの栄さんのお話では、これは「松本一本ネギ」というものだそうです。軽く干して、枯れた葉は取り除き、納屋のような所で寝かせずに、立てて保管するそうです。これで、冬中、鮮度の保たれたネギを食べられるそうです。



(高橋春江さんの大豆)

つぎは、高橋春江さんの豆。上は大豆、下の写真が丹波黒豆です。私(松尾)は黒豆が大好物。京都で暮らしていた頃は黒豆はお正月にしか食べられないものだったのですが、村で暮らすようになると、お茶のみなどでしょっちゅう食べることができます。春江さんには先日、「近々、お訪ねしますので、また黒豆をお願いね」と厚かましくも「予約」をしてきました。


(高橋春江さんの丹波黒豆)

丹波の黒豆は名前の通り、京都・丹波が原産地ですので、豆が成るのが遅く、栄村では雪が来てしまうので、困ったそうです。でも、樋口利行さんによると、毎年、種を採取して、くりかえし植え付けをしていくと、栄村の気候に合わせて実が成るように変っていくそうです。


冬支度で定番とでもいうべきなのが、沢庵の漬け込みですね。国道117号線沿いで漬物用大根をはぜ掛けの三脚で干しているところがありました。



 豪雪の栄村で欠かせない冬支度は、雪消しの水の確保。青倉集落の「あんぼの家」では山からの水をタネ(雪消し用の池)に引き、玄関前の雪を消すための流水がすでに流れています。水の流れが見えるでしょうか。



最後に秋の終りらしい佇(たたず)まいを一つ。「あんぼの家」の手前で撮ったものです。インディアン・テントの青倉の若衆の「迎賓館」。雪に備えて、間もなく撤去します。来春、再びテントを張るのは連休前頃でしょうか。来年は是非、「迎賓館」での宴にお出でください。



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●エコプロファクツ2010に出展します●


*「エコプロダクツ展」って、お聞きになったこと、ありますか?*


(c)エコプロダクツ2010
「エコプロダクツ展」って、お聞きになったこと、ありますか?「日本最大級の環境展示会」とのことで、昨年は18万人の来場があったそうです。1999年に始まったもので、日本経済新聞社などの主催です。
会場はビッグサイト。まだ行ったこともないのですが、とても大きな会場なんですね。


*はぜ掛けを中心に異空間を創り出します*

出展のきっかけは、昨年秋に参加した「森と市民を結ぶ全国シンポジウム」の主催者(国土緑化推進機構)からの1通のメール。NPOは2万5千円で出展できるとのことで、とにもかくにも出展申請し、認められました。
でも、いよいよ出展企画を練る段になって、ハタと困りました。
こういう展示会でのNPOなどのブースは、写真パネルを並べ、机と椅子を出して、報告パンフレットなどを配るというのが定番のようになっています。
「そんなの面白くない!」。山村CSRプロジェクトでお知り合いになり、9月26日の稲刈りに参加された東京の方(霞が関に勤務する人です)から、「日のはぜ掛け。あれをビッグサイトに持ち込みましょうよ」と提案をい今ただきました。
穂がたっぷりついた稲を村からごっそり持ち込みます。会場の一角、メインストリートに面した所にはぜ掛けをします。先端技術が並ぶ会場の一角に究極のエコ、ローテクノロジーの世界を現出させます。


*蓑(みの)を着たり、藁雪靴を履いてみたりしませんか*

栄村ネットワークのブースは角で、はぜ掛けのところ以外に2面の壁面がありますが、青倉・西山田の棚田と豪雪のむらの姿がググッと迫ってくるような装飾にします。そして、スタッフは蓑に藁雪靴というむらスタイル。ご来場の方が蓑や藁雪靴を身につけての記念写真を撮るサービスもします。是非、ご来場ください。

※エコプロダクツ2010の詳細は、公式サイトをご覧ください。
日本最大級の環境展示会 エコプロダクツ2010



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●雪山トレッキングのお誘い●

今年2月の「雪宴」で実施した雪山トレッキング。写真をご覧になった方の多くが、「わぁー、やってみたい!」と言われます。
今冬もやります!いま、決定しているのは2月12日(土)です。天候に左右されますので、13日を予備日とします。


登るのはこの貝立山です

●登山経験なしでもOK!

「雪山」と聞くと、「登山経験がないと無理」と思われる方もおられるでしょう。でも、この雪山トレッキングは登山経験不要です。

ごく普通の体力さえあれば可能です。

装備は、防寒具(スキーウェアが最適)、
雪長靴、かんじき、スキー用ストック(右の写真)。
いずれもレンタル可能です。

 

 

 



●山頂で青倉米を炊いて、ランチしましょう

尾根を登っていくと素晴らしい景色が眼下に広がり、それは最高の気分です。でも、それだけでは人間は満足できないもの。最高の風景+αが欲しい。そこで考え出されたのが、雪山の山頂でのランチ。
 今年2月の雪宴では、青倉米を炊き、豚汁をつくりました。今度はもう少し進化させたいですね。

●ガイドは広瀬明彦さん

雪山トレッキングにはガイドが不可欠。青倉受託作業班の広瀬明彦さん。高校時代、大晦日には仲間と貝立山山麓に登り、かまくらを作って泊り、日の出を待ったといいます。昨年からは村の森林組合にお勤めで、「山はまかせておけ」という人です。


●雪山トレッキングを中心に旅のプランを


ネットワークでは“冬のむらたび”を企画しています。雪山トレッキングに参加してみようという方は、その前後の旅のプランをご自分の希望に合わせてプランニングしてください。冬のプログラムは、むらたびのページでご紹介。予約はネットワークにメールまたはお電話でご一報ください。


貝立山に登り、雪のブナ林を歩いてみてください。

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●山間地の農業をどう守るか●
  〜TPPや「農業構造改革」の流れの中で〜 : 松尾 真


来年6月頃にむけて、農業をめぐる議論が活発になると思われます。PPT(環太平洋パートナーシップ)との関係です。

●「強い農業づくり」で山間地を切り捨て

かつてのウルグアイ・ラウンド合意の時と同様、「農業を守る」ということでの対策資金のばら撒きも予想されますが、今回は、やはり「強い農業づくり」「国際競争力のある農業の育成」が主軸となるものと思われます。この方向で議論されていくとき、栄村のような農地が狭隘な山間地の農業は切り捨ての対象となります。


●複線型社会が必要ではないか


このとき、「PTT反対」のスローガンを掲げて運動するのも1つの対抗策でしょうが、あまり力になるとも思えません。市場経済、グローバル経済ということを考えれば、「自由貿易の例外の排除」は必然の流れだといえるからです。
私は日本の社会(世界全体についても)を複線型の社会として再構築することが必要ではないかと考えます。つまり、都市部などを中心として市場経済を主軸とする社会がある一方で、市場経済の原理だけで動くわけではない山村型社会というようなものもあるという社会です。



●山村の農の営みの原点に立ち返る

私は栄村に通うようになってから満5年が過ぎ(2005年夏から)、栄村で暮らすようになってからもすでに満4年近くになろうとしています(2007年4月から)。
村で暮らすことによって見えるようになってくることがあります。その一つが村の人にとっての農業の意味です。
村の人も「栄村の農業」なんて言い方をしますが、正確に表現すると「農業」ではなく、“農の営み”なのではないかと思います。「農業」という言葉はおそらく「工業」や「商業」という言葉との関係で生みだされたものではないでしょうか。つまり、そもそもは「産業」として農の営みがあるのではなく、「暮らしの一部」あるいは「暮らしそのもの」として農の営みがあるのだと思うのです。


ぜんまいを煮る。これも農の営みだ

「農業専門家」と称する人たちの中には、高齢者が営む自家用栽培中心の農の営みを「趣味的農業」などと揶揄する議論が見られますが、農業を生産高や効率性だけからしか見ることができず、人間の暮らしと農の営みの関係を見ることができない浅薄な議論だと思います。


●「農業の多面的機能」とは
村の人たち、とくに高齢の人たちの暮らしは、〈自らが食べるものは自らの手で作る〉という暮らしです。もちろん、食が豊かになった今日ですから、村の人たちも肉や魚を食べますし、それはお金を払って購入しています。しかし、家の周りの田んぼや畑でとれたお米、野菜が豊富にある食の暮らしはじつに豊かです。いま流行りのスローフードというものは村の中に元々存在してきたものなのです。
こういう暮らしは、必然的に自然界とさまざまな形でつきあっていくものです。自然の豊かさを享受するだけではありません。自然の災いもありますし、自然が豊かであるがゆえに厄介なことも多々あります。一例をあげれば、紅葉です。

10〜11月、村全体が紅葉します。たとえば京都のようにお寺のもみじが紅葉して美しいというのではありません。村全体が紅葉で燃え上がっているという感じです。それはそれは綺麗です。でも、その後が大変。紅葉はすべて落葉となります。11月下旬に各集落で行われる道普請は、その作業の大半が落葉掻きだと言ってもいいくらいです。
口々に「厄介だな」とは言いますが、そういう自然との付き合いが当たり前なのです。「歩道にイチョウの落葉が落ちると汚い」とか言って、落葉する前に枝を切り落としてしまうように市役所に要求する都会の人の姿勢とは異なります。
よく言われる「農業の多面的機能」というものは、自然の豊かさ、災いの双方と付きあっていく村の日々の暮らしがもたらすものだと思います。


落葉がいっぱいの野々海池


●村と結ぶ“食の共同体”を
さて、はじめの方で「複線型社会を」と書きました。ここまでに述べてきたような村とその暮らしが持続する社会ということです。
しかし、このように言うのは簡単ですが、市場経済の巨大な力を考えると、「言うは易く、行うは難し」です。
その実現の道を探ると、青倉米の直売で実現しているような関係をもっともっと広く実現していくことが大事なのだと思います。それはいわば“食の共同体”をつくるということです。いま、青倉米を定期購入して下さっている方は60人強です。一方、青倉集落は約50世帯。青倉の全世帯のお米を扱っているわけではありませんし、数の相似性は偶然でもありますが、約50世帯の集落でとれるお米を約60世帯の人が直売購入で食べているというのは、バランスがとれたなかなかいい関係だと思います。

いま、栄村でとれるお米は1万俵前後のようです。私は、極論かもしれませんが、この約1万俵をすべて直売化できるようにしたいと思っています。しかし、その場合、1万俵を「栄村米」として一括りにする考えはありません。「小滝米」とか「千曲川のほとり米」とか、それぞれのお米がとれる地区毎にネーミングされ、その地区の人と都会の人が結びつくようなものにしたいのです。そして、たとえば17世帯の小滝集落とは都会の20世帯ほどの人たちが“食の共同体”を形成し、食べる人は小滝集落の景観や小滝の人たちの顔を思い浮かべながらご飯を食べるのです。

こんな集落の姿を守りたい (柳在家集落)      

     
なにか1ヶ月早い「初夢」のような話になってきましたが、私はこういう姿が山村の農の営みを持続可能にしていく道ではないかと思うのです。
(了)


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