お米のふるさと便り 24号
2010年9月25日  編集人:松尾真

 今号のTOPIC
* 水を返して!
* 穂の色づきの変化
* 鳴子と針江にいきました
* みんなが遊べる川にしたい
* 『栄村の現代史』発刊されました

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水を返して!




全国的にようやく猛暑が終わり、秋の気配が漂ってきたようですね。みなさま、夏のお疲れは出ていないでしょうか。

上の写真は、長野方面から栄村に入るところ(国道117号線東大滝橋付近)の千曲川の姿を撮ったものです(撮影は2008年9月12日)。真正面にダムが見えます。東京電力西大滝ダムです。ここで毎秒179.5tの水が取水され、ダムから下流に流されるのは毎秒わずか0.26t。このため、栄村を流れる千曲川は平素、「水のない大河」になってしまっています。

この西大滝ダムの水利権更新が今年末に迫っています。
私たちは、千曲川に水を取り戻し、村民、そして村を訪れる人たちが川に親しむことができるようにしたいと願っています。みんなが遊べる川にしたいに詳しい記事があります)

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穂の色づきの変化

8月上旬の出穂から9月末の収穫期にむかって、穂はどんどん色を変化させてきました。いまは田んぼ一面、黄金色です。この色の変化の中で、実が入り、お米が出来上がってくるのです。天候が悪く、稲刈りが遅れていて、9月末が収穫のピークとなります。
では、穂の色の変化をご覧ください。
  

8月8日                


8月18日
 

8月24日
                  
9月1日
 

9月14日


9月23日


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鳴子と針江にいきました

9月6日、宮城県の鳴子に行ってきました。“こけし”で有名な鳴子温泉があるところですが、以前にご紹介した「鳴子の米プロジェクト」が5年前に始められた鬼首(おにこうべ)という地区を見るためです。また、9月18日には、村の人たち9名と共に、滋賀県高島市の針江というところに視察研修に行きました。“生水(しょうず)の郷(さと)”と呼ばれ、地下からの湧水を生かす暮らしの文化があるところです。



●くい掛(が)けで天日干し
鳴子の鬼首では珍しい光景を目にしました。“くい掛け”です。
右の写真はNPO法人鳴子の米プロジェクトの安部祐輝さんから送っていただいた稲刈り交流会(9月18日)のものですが、人びとの後ろに見えるのが“くい掛け”です。
刈った稲の束を下の写真に見える杭にどんどん刺し込んでいくのです。鬼首を案内して下さった後藤錦信(市会議員)さんに、「くい掛けした稲を何日かしたら、ひっくり返したりするのですか?」とお尋ねすると、「いや、このままで十分に乾燥します」とのこと。本で読んだことはありましたが、くい掛けを見るのは初めて。鬼首に向かう途中、車窓かたくい掛けが並ぶ田んぼを見たときは、その珍しい姿に驚きました。



●16町歩作付、1千俵以上を直売
6日夜、鬼首山(おにこうべやま)学校(がっこう)というところで、鳴子の米プロジェクト作付者部会が開かれ、松尾も参加させていただきました。鬼首山学校は学校統合で廃校になった鬼首中学校の校舎をNPO法人が無料で借り受け、地域活動の拠点としているところです。
作付者部会で聞いた話はびっくりするものでした。5年前にわずか3名、3反の田んぼでの寒冷地用新品種東北181号(現在は「ゆきむすび」という銘柄名がついている)の作付からスタートした鳴子の米プロジェクト、今年は作付者が30名近く、作付面積16町歩に拡大し、1千俵をはるかに超えるお米をすべて直売しているのです。
鳴子温泉のホテル・旅館が契約購入して温泉客のみなさんに出していたり、「小林弁当店」という宮城県の弁当会社が200俵を買い入れ、「ゆきむすび弁当」を販売しているそうです。いちばん驚いたのは、米代金が全部入金されるまでの間、農家に支払いができるよう、地元銀行が400万円の融資をしていることです。「NPO法人への銀行融資は全国で初めてでしょう」とのことでした。



●針江のかばた文化
一方、滋賀県高島市の針江、ここはどの家でも地下10〜20mほど掘ると、水が湧き出してきます。その湧水を「生水(しょうず)」と呼び、水が湧きだす所は「カバタ」(川端)と呼ばれます。そこでは野菜を洗ったり、果物を冷やしたり、暮らしに必要な水のすべてがまかなわれています。
地区の真ん中を針江大川が流れています。その水は湧き水が集まったものです。


私たちが18日昼過ぎに針江に着くと、大阪からやって来た子どもたちが針江大川で水遊びに興じていました。地元農家の石津文雄さんにお聞きすると、「阪神大震災のとき、被災者の子どもたちを針江に招待したのですが、どうやって遊ばせようかと考え、大川で発泡スチロール製のイカダで遊ぶことを思いついたのです」とのこと。いまでは、地元の子どもは夏になると、毎日、イカダに乗って大川で遊んでいるそうです。この光景は栄村の“むらたび”にいいヒントを与えてくれました。山から千曲川にむかって流れる川・沢がいっぱいあります。そこで都会から来た子どもたちに思う存分遊んでもらうことです。


●ゆりかご水田プロジェクト

針江視察の後半、石津文雄さんに田んぼに案内していただきました。「ゆりかご水田プロジェクト」というものが行われている田んぼです。コイやフナが上り産卵することができる田んぼを取り戻す試みです。そのため、無農薬あるいは減農薬の米づくりが行われています。
写真をご覧ください。石津さんの田んぼですが、見渡すかぎり、畦が見えません。それもそのはず、なんと1.5町歩もの広さの田んぼなのです。よくご紹介する「まつお田んぼ」はわずか1畝(1a)、その150倍の田んぼなのです。


●三五郎さんに出会う
針江視察の最後に針江大川の「中島」というところに案内していただきました。「おかず獲り」という伝統漁が行われてきた場所です。針江のパンフレットでは、「職業ではなく、晩のおかずのために漁に出ること」と説明されています。


上の写真が「中島」で、写っている舟は「おかず獲り」をしてきた漁師・田中三五郎さんが使ってこられたものです。
三五郎さんは89歳。いまは現役を退かれていますが、NHKスペシャルで紹介され、針江が有名になるきっかけとなった人です。最近は、針江を訪れる人たちが「会いたいな」と思っても、なかなか出会うことができないのですが、私たちが中島を訪れている最中に偶然、三五郎さんがやって来られ、お会いすることができました。とても素敵なおじいさんです。



「生水の郷」には1年間に1万人の人びとが訪れるそうです。そして地元の人たちがガイドとなって案内してくれます。
針江は、「水のある暮らし」が学びのツアーを呼び込み、田んぼの生き物を守るために無・減農薬の米作りに挑戦するなど、私たちが学ぶべきことがたくさんあるところでした。



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みんなが遊べる川にしたい

先月のお便りで、8月23日のラフティングの様子をご紹介しました。
9月17日にも長野の清泉女学院短大の学生さんたちがラフティングをされましたが、この日は雨によって水嵩が上がり、栄村村内の千曲川では実施できず、上流の湯滝温泉から上桑名川(いずれも飯山市)までの間で実施しました。かなり茶色っぽい水が大量に流れ、少し怖そうに思えましたが、学生さんたちに言わせると、「一度、ボートから落されて水の中に入ると、怖くなくなった」そうです。


大河の中を進む小さなボート 


いま60歳以上の人であれば、栄村の人に限らず、全国各地色んな地域で「子どものころはしょっちゅう川遊びをした」という人がたくさんおられると思います。それに比べて、いまは川で遊ぶことがほとんどなくなり、その結果、本当の意味での川の怖さを理解できる人が少なくなりました。
ダムによって千曲川・信濃川の水が大きく減っていることをめぐっては、鮭などの魚の遡上問題など色んな問題がありますが、私たちは〈川で遊ぶ〉、〈川と親しむ〉ということをとくに重視したいと考えています。

 
●千曲川・信濃川から水が消えるわけ
栄村の手前から十日町市にかけての千曲川・信濃川に西大滝ダム、宮中ダムと2つのダムがあります。この2つのダム、高さはさほど高くありません。ダムのところに発電所があるわけではないのです。
 西大滝ダムで取水された水はトンネルに入り、29kmも先の津南町の鹿渡というところで山の上から導水管で落され、その落下のエネルギーで発電する仕組みなのです。ですから、西大滝ダムから鹿渡までの間、千曲川・信濃川にはほとんど水がないのです。


鹿渡発電所への導水管

しかも、鹿渡発電所から出された水で信濃川は水位を回復しますが、それも束の間、今度はすぐ下流の宮中ダムでまたもほとんど取水され、JR東日本の3つの発電所までまたもやトンネルで運ばれるのです。この宮中ダムで取水された水による発電が東京の山手線の電車を走らせる電力の半分を賄っているのです。昨年、違法取水が発覚し、いったん取水権が取り消されたダムです。

この構造を最近出版された本の図をお借りして示しておきましょう。
朝日新聞の記者・三浦英之さんが書かれた『水が消えた大河で』
(現代書館)です。
引用:三浦英之 『水が消えた大河で』(現代書館)

鹿渡の発電所手前の信濃川を見ると、ほとんど水がありません。しかし、発電所より少し下流を見ると水が滔々と流れています。発電の後、水が信濃川に放流されたからです。しかし、またすぐに宮中ダムで取水されてしまいます。


発電所向かい側の川には水があまりない


     
発電所下流にはたくさんの水が


●西大滝ダムで取水しないと、千曲川はどんな様子になるか

私たちは「西大滝ダムをただちになくせ」とか「ダムで一滴の水も取るな」と言っているわけではありません。
でも、もし西大滝ダムで取水されなければ、栄村の千曲川がどんな様子になるのでしょうか。昨年9月、鹿渡の発電所の工事のため、西大滝ダムの取水が停止され、全面放流されたことがありました。

その時の様子を紹介します。こちらの写真をTOP記事「水を返して!」の写真と見比べてください。

百合居橋のすぐ下流。全面放流時


百合居橋のすぐ下流。2008年9月12日のものです。
 
栄村ネットワークでは、東京電力に話し合いの場をもつよう申し入れ、10月20日に会うことになりました。栄村の千曲川に水を取り戻すために、一歩一歩、努力を重ねていきたいと考えています。



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『栄村の現代史』発刊されました

『高橋彦芳さんが語る栄村の現代史』がついに発刊されました。頒価は2,000円です。ご注文は電話またはメールでお願いします。

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